Abstract : |
従来より大動脈弁位人工弁圧較差(以下PG)について多くの検討が行われてきたが各症例に選択すべき人工弁の種類・サイズに関しては統一見解が得られていない. 一方超音波検査の進歩は著しく, PGが測定可能になった. そこで, PGが左心機能に及ぼす影響を検討することによりPGの許容範囲を決定し, 各症例に対して用いるべき人工弁を知るために以下の研究を行った. 1.単独AVR(AR:25例, AS:14例)のPGと, 術前, 術後1カ月・6カ月, 1年・平均5年(安静時・負荷時)の心機能を測定した. AR・ASともPGが25mmHg以下では, 左室肥大・安静時心機能は正常化し, 運動負荷時の反応も良好であったが, 25mmHgより大なる場合には左室肥大が残存し, 運動負荷時の反応も不良でPGの許容範囲は25mmHg以下と考えられた. 2.St.Jude Medical(SJM)弁11個, Bjork-shiley(BS)弁9個, Lillehei-Kaster(L-K)弁13個, Omniscience(O-S)弁32個のPGを測定し弁葉の動きを観察した. SJM弁とBS弁では, Area Index(幾何弁口面積/体表面積)とPGに有意の負の相関関係を認め, PGを25mmHg以下にとどめるためには, SJM弁ではArea Indexが1.4cm2/m2以上, B-S弁では1.7cm2/m2以上となるサイズを選択する必要があると考えられた. L-K弁・O-S弁ではdisc開放角が, L-K弁平均54度・O-S弁平均46度と低下し, Area IndexとPGには有意の関係がなく, PGを25mmHg以下にとどめるために選択すべきサイズの決定はできず, これら両弁種の使用は望ましくないと考えられた. |