アブストラクト(37巻6号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 活動期感染性心内膜炎に対する外科治療-特に人工弁感染の臨床像の変化について-
Subtitle : 原著
Authors : 富永隆治, 川内義人, 麻生俊英, 益田宗孝, 木下和彦, 田中二郎, 徳永皓一
Authors(kana) :
Organization : 九州大学医学部心臓外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 37
Number : 6
Page : 1114-1120
Year/Month : 1989 / 6
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 1987年4月までに感染性心内膜炎(IE)の活動期に手術を施行した20例について検討した. 自己弁感染(NVE)11例はいずれもARにNYHAIII度以上の心不全を伴い, また, 緊急手術となった10例のうち4例に弁輪部膿瘍を認めた. 手術はAVR 4例, AVR+MVR 5例, AVR+TVR 1例及び三弁置換1例を施行した. 手術死は1例(9.1%)で重症LOSに合併した人工弁感染(PVE)にて失った, 遠隔死は3例(33.3%)であり, うち2例はPVEに移行し再手術を施行するも各々1.5及び10カ月後に失い, 他の1例は術後2.5カ月に血栓弁にて失った. 生存7例は全員NYHAI度に改善した. 一方, PVE 9例の手術適応はNYHAIII度以上7例, 塞栓症4例, 高度溶血3例及び弁輪部膿瘍2例であったが, この中に従来のPVEの病態と異なり, 術前に発熱なく炎症所見も軽微で弁周囲逆流を主症状とする3症例を認めた. 手術は11回施行され, reAVR 3例, reMVR(+TAP)5例, reAVR+MVR(+TAP)2例及び大動脈人口弁弁座固定1例であったが, このうちreMVRの1例は弁周囲逆流を繰り返し, 計3回の再手術を必要とした. 手術死の1例(11.1%)は術前に多発性梗塞を伴っており, MOFに陥り失った. 遠隔死は3例(37.5%)あり, 早期PVEの2例と術後11カ月での急死1例であった. このように, 活動期IEでも全身状態が悪化する前に外科的に感染巣の徹底除去と適切な修復を行うことにより好成績が得られた. また最近, 発熱や炎症所見が軽微でPVEと診断されぬまま, 単に弁周囲逆流の診断のもと手術を行った症例を経験した. かかる弁輪部局所の慢性感染例では再手術後も弁周囲逆流を繰り返すことが多く, 外科治療に際して注意が必要である.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 感染性心内膜炎, 人工弁感染, 自己弁感染, 弁周囲逆流, 感染活動期の手術
このページの一番上へ