Abstract : |
最近8年間に6カ月未満乳児の大動脈縮窄症(CoA)53例(内新生児27例)に外科治療を行った. 術前, 31例(58%)にPGE1, カテコラミン, メイロンなどの投与や人工呼吸管理が行われ, 診断は主に断層心エコーと橈骨動脈注入大動脈造影によった. 53例中CoA単独, 又はminor anomaly合併(I群)は9例, 有意のVSD合併(II群)は30例, 複雑心奇形合併(III群)は14例で, 初期の2例を除きII群では縮窄修復のみを, III群では縮窄修復に加えてPABを診断確定後24時間以内に行う方針をとった. 縮窄部修復法は端々吻合2, flap aortoplasty 48(SCF46, CAF2), 端々吻合+flap aortoplasty3例で, 一期的根治を行った初期のII群2例中1例を失ったが, 最近の51例では, 早期死1例(2%), 遠隔死5例(10%)であった. 二期的開心術はI群1, II群16, III群9例に行われ, 内4例が死亡したが何れもIII群症例であった. II群症例の内, (1)極小未熟, (2)重症他臓器奇形, (3)肺合併症, (4)高度栄養不良, などがみられる例ではPABが追加ないしは同時に行われたが, これらを除くと新生児8/8(100%), 1~5カ月児7/12(58%)で, 縮窄修復のみで術後早期に人工呼吸管理から離脱できた. 長期生存46例, 平均3.9年の追跡で, 圧差10mmHg以上の再狭窄がみられたのは1例(2.2%)のみであった. 以上の結果から, 1)乳児期早期CoAの治療成績の向上には, 術前の積極的な呼吸循環管理, 非侵襲的早期診断と早期治療, flap aortoplastyによる十分な縮窄の解除が重要, 2)PABはIII群症例及び危険因子を伴うII群症例に良い適応があると結論された. |