アブストラクト(37巻6号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 解離性大動脈瘤手術前後の腎機能及び手術方法の検討-偽腔により還流されていた腎の術後血流, 機能の変化について-
Subtitle : 原著
Authors : 玉木修治*, 中島伸之, 川幅浩平, 安達盛次, 安藤太三, 藤田毅
Authors(kana) :
Organization : 国立循環器病センター心臓血管外科, *名古屋大学医学部胸部外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 37
Number : 6
Page : 1179-1186
Year/Month : 1989 / 6
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 1977年12月から1985年2月までの解離性大動脈瘤(DAA)に対する手術件数は85件であった. この内腎動脈が偽腔から起始していた症例で十分に検索し得た27例の内, 術前腎に器質的機能的障害のなかった20例をI群, 障害を認めた7例をII群とし, 血流を真腔にのみ流す手術施行前後の腎の血流, 機能の変化からDAAによる腎障害の要因と手術方法及びその効果について検討した. また両側腎動脈がともに真腔から起始していた症例の内16例をI群のcontrol群とした. I群では術前大動脈造影で全例腹部大動脈以下にre-entryが存在し, 偽腔及び偽腔より起始する腎動脈の血流はよく保たれていた. 術後の造影では術前のre-entryがentryとなって偽腔より起始する腎動脈を還流し, 知り得たCT, 腎シンチでも術前後での変化はなかった. また入院時, 術後1病日, 最高値, 退院時それぞれの血清クレアチニン値(SCr)もI群とcontrol群との間で差は認めなかった. II群において術前大動脈造影で血流が途絶あるいは減少していた腎動脈は偽腔より起始するものが4例, 真腔より起始するものが4例あり, それらが還流する腎にはなんらかの器質的障害が認められた. しかし術前の腎機能については正常例も高度障害例もあった. I, II群の内計24例で術後下行大動脈の偽腔における血栓形成を見ると術後なお下行大動脈にentryの存在した症例と末梢側吻合部で偽腔へのleakageを残した症例を除けば12例中11例において偽腔は完全に血栓化され血流は存在しなくなった. 以上まとめると術前腎に器質的機能的障害のない症例ではentry閉鎖術後も術前のre-entryが術後entryとして偽腔に血流を供給するので腎の機能障害は生じない. DAAによる腎機能障害は解離に巻き込まれた腎動脈が真腔から引きちぎられるに至るまでの腎虚血の程度とその持続期間及び腎動脈の損傷の形態的パターンによって決定されると考える. entry閉鎖後の偽腔での血栓形成因子は病型や病因ではなく残存血流の有無である.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 解離性大動脈瘤, 腎機能障害, 偽腔血栓形成, 偽腔血流, 手術方法
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