Abstract : |
肺高血圧症を伴う心室中隔欠損症開心根治術後に術後肺高血圧クリーゼからショックに陥り, 左房輸血と肺動脈内塩酸トラゾリン投与がよく奏功し救命した症例を経験した. 症例は1歳11カ月女児Down症候群. 術前の心カテーテル検査所見は, 肺体収縮期圧比1.0, 左右短絡比55%, 肺体血流比2.20, 肺体血管抵抗比0.37であった. ICU帰室6時間後, 気管内吸引を誘因として徐脈, 低血圧, 肺高血圧, ショックとなった. あらゆる昇圧剤に反応なく, 左房輸血と塩酸トラゾリンの肺動脈内投与が有効で動脈圧が出現し, 心拍数の増加が得られ救命できた. その後も気管内吸引, 人工呼吸離脱時に肺動脈圧上昇と混合静脈血酸素飽和度低下を認め, 塩酸トラゾリンの持続点滴を要した. 術後44日目に軽快退院した. 術前肺高血圧症を示す症例では, 術後肺高血圧クリーゼを来す危険性があり, 診断と治療のために肺動脈圧の持続モニタリングの必要性が示唆された. 先天性心疾患の根治手術後に急激な発作性肺高血圧症を来すものがありWhellerら1)が術後肺高血圧クリーゼ(post-operative plulmomary hypertensive crisis:PHC)として報告した. |