| Abstract ： |
右心室の灌流血の多くを集める前心静脈系は, 冠状静脈洞とは別個に右心房に開口するため, 冠状静脈洞から逆行性に心筋保護液を注入する逆行性cardioplegia法では右心室の心筋保護効果が低下することが危惧される. そこで雑種成犬17頭を用いて, 軽度低体温体外循環下に60分の大動脈遮断を行い, I群：順行性cardioplegia群（6頭）, II群：逆行性cardioplegia群（6頭）, III群：局所冷却併用逆行性cardioplegia群（5頭）について心虚血前後の右心機能を比較検討した. 心筋保護液は4℃のSt.Thomas Hospital液を,初回は15ml/kg, 20分後, 40分後にそれぞれ7.5ml/kgを投与した. 大動脈遮断解除後10分間の補助循環ののち体外循環より離脱し, 遮断解除後15分, 30分, 45分, 60分に各種血行動態指標及び超音波変位計を用いて右室長軸短縮率を測定した. 1.順行性cardiolegia群では虚血前後において右心機能に変化は認めなかった. 2.逆行性cardioplegia群では右房圧が前値2.4±0.80mmHgから大動脈遮断解除後15分, 30分でそれぞれ4.6±1.40, 3.7±0.48mmHgと有意（p＜0.01）に高値を示し, 右室長軸短縮率が大動脈遮断解除後15分の時点で前値の61.6±13.9%と有意（p＜0.05）に低下し, 虚血後早期に右心機能低下を認めた. 3.これに対して局所冷却併用逆行性cardioplegia群では, 虚血後の右心機能低下は認めず, 逆行性cardioplegia法における虚血後早期の右心機能低下は, 局所冷却の併用により防止できることが示唆された. |
