アブストラクト(37巻7号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 開心術の腎機能に及ぼす影響-急性腎不全非発症例における検討-
Subtitle : 原著
Authors : 安藤廣美, 松井完治, 河野博之, 栗栖和宏, 原田篤実*, 富永隆治**, 麻生俊英**, 小江雅弘**, 坂本真人**, 松崎浩史**
Authors(kana) :
Organization : 松山赤十字病院心臓血管外科, *松山赤十字病院内科, **九州大学医学部心臓血管外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 37
Number : 7
Page : 1311-1316
Year/Month : 1989 / 7
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 安定した術後経過を示し急性腎不全の発生をみなかった冠動脈バイパス手術症例(IHD群)19例, 弁置換術症例(VHD群)19例をもとに開心術が腎機能に及ぼす影響について検討した. 腎血漿流量(RPF)は術前IHD群373ml/min, VHD群265ml/minから体外循環中はそれぞれ122ml/min, 80ml/minと低下した(p<0.001). 糸球体濾過値(GFR)も術前IHD群82ml/min, VHD群69ml/minから体外循環中は21ml/min, 20ml/minと低下し(p<0.001), その後の回復をクレアチニンクリアランス(Ccr)でみると術当日もそれぞれ43ml/min(p<0.001), 37ml/min(p<0.01)と依然低値を示し, 両群とも術後1日目にはほぼ術前値へ回復したが, VHD群は術後3日まで回復傾向を示した. 一方, 尿量は術前IHD群0.93ml/min, VHD群0.78ml/minから体外循環中それぞれ3.8ml/min, 4.3ml/min, 術当日3.5ml/min, 3.2ml/minと著明な増加(何れもp<0.001)を示し, IHD群は術後3日, VHD群は術後5日まで高値を示した. Fractional excretion of sodium(FENa)は術前IHD群1.0%, VHD群1.1%から体外循環中それぞれ9.9%, 7.6%(p<0.05), 術当日4.8%, 5.5%(p<0.001)と高値を示した. IHD群8例, VHD群8例の計16例で検討した抗利尿ホルモン(ADH)の経過は術前1.5pg/mlから体外循環中58.6pg/ml(p<0.01), 術当日41.1pg/ml(p<0.001), 術後1日目25.1pg/ml(p<0.001)と著明な増加を示し, 術後3日目に術前値へ復帰した. 自由水クリアランスをみると, 術前IHD群-0.84ml/min, VHD群-0.40ml/minより術当日それぞれ-1.33, -1.08, 術後1日目-1.26, -0.78ml/minと有意な自由水再吸収の増加をみたが, いずれも1ml/min程度の自由水再吸収であり, ADH増加に見合った自由水再吸収の著増はみられなかった. すなわち開心術後はRPF, GFRは低下し, ADHは上昇しているにもかかわらずNa再吸収の低下, 自由水の不十分な再吸収により尿量はむしろ増加した. 以上より安定した術後経過を示す冠動脈バイパス術, 弁置換術いずれの症例においても開心術後早期には尿濃縮機能障害を主とする一過性のsubclinicalな腎不全に陥っているものと考えられた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 体外循環, 抗利尿ホルモン, 尿濃縮機能障害, 腎不全
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