Abstract : |
弁膜症の手術成績の向上に伴い, 再手術例も増加している. 再手術では種々の初回手術とは異なった問題点を有している. 1986年12月までの5年間に再手術を行った後天性弁膜症は78例で, このうち再開心術を行ったものは56例であった. 年齢は21歳から60歳, 平均48歳で, 男13例, 女43例であった. 初回手術から再手術までの期間は1.5カ月から21年, 平均6年であった. 全例胸骨正中切開(3例では右側開胸を併用)で手術を行ったが, 心損傷の予防, 出血量の減少と手術時間の短縮のため心膜の剥離は全く行わず, 必要最小限にとどめた. 人工心肺からの送血は外腸骨動脈から, 脱血はバルーン付きカニューレにより心膜を通して右房から, 左心ベントは右肺静脈から行った. 術中心筋保護は心筋保護液と局所冷却により行ったが, 左胸腔にも冷水を満たし心筋温の上昇を防いだ. 心内操作終了後の空気排除は体位変換を行いつつ大動脈基部と左房ベントから十分に行っており, 空気塞栓の経験は全くない. 56例に対して行った手術はMVR10例, MVR+TAP22例, MVR+AVR6例, MVR+AVR+TAP5例, AVR4例, MVR+TVR, 人工弁血栓除去術各2例, 及び人工弁周囲逆流修復, MVR+AVR+TVR, TVR, OMC+TVR, AVP+MVR+TAP各1例であった. 手術成績では術後早期死亡は3例(5.4%)で, 遠隔死亡は4例(7.1%)であった. 早期死亡3例の死因はいずれも非心原性であり, 死亡率も初回手術のそれに比し有意差を認めなかった. 再手術においても補助手段の工夫により初回手術例と同様のriskで手術を行うことができると考えられ, 患者の全身状態の悪化する以前に積極的に手術に踏み切るべきであろう. |