Abstract : |
補助心臓をブリッジとして用いる心臓移植の可能性を探るため, 最近4年間の入院死亡のうち, 心筋症と通常の手術例を除いた65歳未満の成人例を検討した. 補助人工心臓の適応可能例は計42例で, 年齢は22~63(平均50)歳,性別は男性30例, 女性12例であった. 疾患と状態から整理すると, I)心原性ショックを伴った最重症虚血性心疾患25例, II)高度不可逆性心筋障害を呈する弁膜症8例, III)手術後に補助循環を行い離脱不能となった各種心疾患9例の3つに分類された. 42例のうち心臓移植へのブリッジ可能例は, 虚血性心疾患4例, 弁膜症2例, 補助循環離脱不能4例の計10例(23.8%)で, 残り32例の除外要因は, 年齢55歳以上15例, 糖尿病5例, その他の合併症12例であった. 入院, 又は手術から死亡までの期間は, 虚血性では3日以内, 弁膜症では6カ月前後, 離脱不能では左心補助人工心臓(LVAD)使用例以外は数日であった. 各症例の詳細な検討の結果, 心臓移植へのブリッジとしての補助人工心臓の各分類ごとの適応可能時期は, I)心原性ショックでは, 大動脈内バルーンパンピング(IABP)療法にても不可逆的な心室不全, 又は致死的不整脈が続く場合, II)末期的な弁膜症では, 補助心臓準備下でなければ手術適応とならない場合, III)手術後の治療不応性のポンプ機能不全では, IABP駆動下でも補助循環から離脱できないか難治性の心不全が回復しない場合と考えられた. このブリッジ適応時期の実際的な決定には, 各疾例の循環動態を経時的に的確に把握するとともに, 全身状態の綿密な管理が重要と思われた. |