Abstract : |
体外循環特に大動脈遮断に際し血中のカテコールアミン(CA)が上昇するが, これらが生体のどの部分で主に分泌されるのか, またその臨床的意義は何かを知るために, 成人開心術26例を対象に, 体外循環下に上大静脈, 下大静脈, 冠静脈, 動脈の4分画(A群), 冠静脈, 動脈の2分画(B群)のそれぞれ採血を行い, 大動脈遮断を中心に経時的にエピネフリン(E)及びノルエピネフリン(NE)を測定した. A群のどの時点においても下大静脈Eが上大静脈より有意に高値で, また大動脈遮断解除の時点で著しい高値を示した. 体外循環侵襲に対するE反応は主として副腎髄質で起きていることを示唆し, また, これは大動脈遮断にとくに強く反応した. 一方, 大動脈遮断前及び直腸温34℃に復温時あるいは体外循環終了時には動脈NEが冠動脈NEより高値を示し, 心筋はNE取り込みの傾向を示した. しかし, 大動脈遮断解除時にはほぼ一様に冠静脈NEが動脈NEより高値を示し, 心筋はNE遊出の態度を示した. この心筋のNE遊出量(動脈NE-冠静脈NE)と術前の左室心筋重量, 術後のCPKmax, GOTmaxとの間に逆相関傾向を認めた. 心筋のNE遊出量は大動脈遮断による心筋障害をある程度表していると考えられた. 体外循環中に上昇するCA及び心筋遊出NEは, 一方では生体の生理的要望に応えているが, 他方では再灌流を中心に不整脈, 冠攣縮あるいは心筋障害の原因となり得る. |