アブストラクト(37巻8号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 胸膜中皮腫の診断と外科治療上の問題点
Subtitle : 原著
Authors : 坪田紀明, 八田健, 吉村雅裕, 柳川昌弘
Authors(kana) :
Organization : 兵庫県立成人病センター胸部外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 37
Number : 8
Page : 1493-1498
Year/Month : 1989 / 8
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 6年間に手術を行った12例の胸膜中皮腫につき診断上の問題点と治療成績につき検討を加えた. 1:限局性の6例;単発の5例は年余にわたる変化を初診からの胸部写真で比較した. 3例は術後2年以上良好に経過しているが, 1例は切除後2年を経て全身転移にて死亡した. 他の1例は5年前の初回切除時から3年を経て局所に再発し, 再切除により2年を良好に経過した. 多発ではあったが限局性の形態をもった1例には, 3回の切除を繰り返したが, 2年足らずで死亡した. 剖検にてび漫性となった腫瘍が胸腔, 心嚢腔を満たしているのが判明した. 2:び漫性の6例;胸水の貯留から試験開胸で診断を得るまでの6カ月~4年間を結核の治療に費やされた症例が4例あり, うち3例は2年未満の経過で呼吸不全状態にて死亡した. 残る1例と胸膜生検で術前診断の得られた他の2例に対し胸膜肺摘除術及び上大静脈, 横隔膜, 心嚢の合併切除と針生検時に生じた皮下播種巣の同時切除が行われた. そのうちの1例は腹膜に中皮腫が証明され, 10カ月で死亡した. 剖検にて生前開腹時にみられた播種巣は抗癌剤の腹腔内投与によって著明な減少を見たが, 薬剤の非到達部位には腫瘍が残存した. 本疾患外科治療上の要点は, a.限局性胸壁腫瘤影例には早期手術と術中迅速診断を用いた肋骨を含む広範囲切除に心掛け, b.診断困難な胸水貯留例には安易な針生検の繰り返しや漫然とした結核の治療を慎み, 早期に審査開胸を実施することである. このことがより有効な外科療法や抗癌剤局所投与につながるものと考えられる.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 胸膜中皮腫, 胸膜肺摘除, 抗癌剤局所投与, 腹膜中皮腫
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