アブストラクト(37巻8号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 穿通性胸部外傷の臨床的検討
Subtitle : 原著
Authors : 平田展章, 榊原哲夫, 野村文一, 中川勝裕*, 九鬼覚*, 阪越信雄*, 高橋俊樹*, 岩瀬和裕*
Authors(kana) :
Organization : 大阪警察病院心臓センター心臓血管外科, *大阪大学医学部第1外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 37
Number : 8
Page : 1499-1503
Year/Month : 1989 / 8
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 穿通性胸部外傷に対する外科治療を39例経験した. 年齢は21~56歳(平均38.7歳), 男女比は35:4であった. 刺創は31例(うち2例死亡), 銃創は8例(うち4例死亡)であった. 単純胸壁損傷を14例に認めたが, すべて救命できた. 肺損傷を18例に認め, 10例は胸腔ドレナージ術のみで治癒したが, 8例に開胸術を要した. 出血のため6例を, 創刺入部位により心損傷を疑ったため2例を開胸した. 胸腔ドレナージを施行した10例中2例, 開胸術を施行した8例中1例を失ったが, その死因はいずれも肺損傷と直接関係なく, 他臓器損傷によるものであった. 心損傷は7例であり, 損傷部位は左室・右室各1例, 右房2例, 心膜3例であった. 創刺入部位は7例中6例でSauerらのdanger zoneであり, 残りの1例はその近傍であった. 全例ショック症例であったが, 来院時血圧を測定し得ないほどの重篤なショックを呈した左室・右房損傷の2例を失った. 食道損傷は1例のみであったが合併した頸動脈損傷のため出血死した. 多発外傷例は21例であり, 腹部20例(95.2%), 四肢7例(33.3%), 頸部2例(9.5%)であった. 死亡症例はすべて多発外傷例でありその予後は不良であった. 以上より創刺入部位がSauerらのdanger zone内及びその近傍でショックを呈する症例は, 心損傷を疑い直ちに緊急開胸術を施行すべきであり, これ以外の症例において肺損傷が疑われるならば, まず胸腔ドレナージにて経過観察し, その上で出血量が1~2時間で600~1,000ml以上及び血行動態維持が困難な場合に開胸術を考慮すべきであると考える.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 穿通性胸部外傷, 刺創, 銃創, 多臓器損傷
このページの一番上へ