アブストラクト(37巻8号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 胸部刺創例の臨床的検討-とくに重症度と予後を規定する因子について-
Subtitle : 原著
Authors : 湯浅洋司, 辺見弘, 山本保博, 益子邦洋, 小関一英, 安田和弘, 牧野俊郎, 大塚敏文
Authors(kana) :
Organization : 日本医科大学救急医学科・救命救急センター
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 37
Number : 8
Page : 1532-1536
Year/Month : 1989 / 8
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 胸部刺創の重症度は幅広く, 放置しても差し支えないものから, 急速に死に至るものまで様々である. 当施設で経験した胸部刺創例を対象として, とくに重症型と予後を規定する因子(腹腔内臓器損傷の有無, 部位, 入室時循環動態)及び心刺創に関して検討し, 若干の文献的考察を加えて報告する. 対象は, 昭和50年4月より62年3月までの12年間に当センターで治療を受けた胸部刺創患者117例である. このうち21例が死亡し, 死因のうち最も多かったのは大量出血で, 17例であった. なかでも腹腔内臓器からの失血死が7例を数え, 胸部刺創でも腹腔内臓器損傷の重要性を示唆している. 受傷部位別の重症度, 予後をみると, 従来より危険域(danger zone)とされている前胸部は, 心大血管損傷が多く, 死亡率が高かった. また, 右側胸部刺創の死亡率も高く, その死因はすべて肝損傷による失血であり, trans-diaphragmatic injury(経横隔膜腹腔内臓器損傷)の重要性を示している. それ故, 胸部刺創危険域としては前胸部のみならず, 右側胸部(とくに下部)をも含める必要があると考える. 入室時循環動態の不安定な例は死亡率が高いが, 来院時心肺停止(DOA)例の6例中5例に救急室開胸(ERT)を施行し, そのうち1例が救命に成功した. 鈍的外傷と異なり, 刺創によるDOAは救命の可能性が高いことから, ERT等の積極的治療を行うべきである. 心刺創の63.6%が致命でき, その救命率はかなり高いといえる. 以上の経験から, われわれが胸部刺創に対して現在行っている治療方針を述べた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 胸部外傷, 胸部刺創, 心刺創, 来院時心肺停止, 救急室開胸
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