アブストラクト(37巻10号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 虚血後再灌流における至適灌流温度-rat摘出灌流心による実験的検討-
Subtitle : 原著
Authors : 田中啓之, 鈴木章夫
Authors(kana) :
Organization : 東京医科歯科大学胸部外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 37
Number : 10
Page : 2089-2099
Year/Month : 1989 / 10
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 虚血に引き続く再灌流がreperfusion injuryを惹起することが知られており, 至適な再灌流条件を設定することが虚血心筋の回復にとって重要である. 本研究では, 再灌流時の至適な再灌流温度について, rat摘出灌流心を用い, 心筋エネルギー代謝, 心機能, 心筋超微構造の面より検討を加えた. 20℃, 60分間の虚血に引き続く10分間の再灌流を20℃, 30℃, 37℃の3群に分けLangendorff冠灌流にて再灌流し, 更に20分間を37℃, working modeにて再灌流した, 再灌流10分でのATP, CPは37℃群に比し, 20℃群, 30℃群で良好に回復し, 同時点での20℃群の心筋超微形態は37℃群に比し良好に保存された. 再灌流初期の心拍数と冠灌流量は低温で再灌流することにより減少し, 再灌流初期の冠灌流量とCPとの間には負の相関関係を認めた. working modeによる再灌流20分間での心機能の回復は20℃群で遅延する傾向を認め, 再灌流10分後の急激な心筋の加温と心負荷の増大が, その回復に悪影響をもたらした事が示唆された. 最終的な大動脈拍出量の回復率は30℃群において最も良好であり, 心拍数×最大収縮期圧で得られるdouble productは37℃群に比し, 20℃群, 30℃群において有意に良好であった. 再灌流終了時でのATP, CPは各群間に有意差を認めなかった. 以上の結果より, 再灌流初期の灌流温は常温に比し20℃, 30℃の低温再灌流が有利であると考えられた. また, 再灌流時の急激な心筋の加温は, 虚血心筋の回復に悪影響を及ぼす事が示された.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : reperfusion injury, 温度, 低体温, 心筋エネルギー代謝, rat摘出灌流心
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