Abstract : |
体外循環下開心術症例22例を対象に体外循環中及びその後の血漿過酸化脂質値の変化を経時的に測定し, 体外循環が血漿過酸化脂質値に及ぼす影響を検討した. 過酸化脂質はチオバルビツール酸反応(八木法)により測定し, マロンジアルデヒド値に換算して示した. 予備実験にて, 血漿過酸化脂質実測値の体外循環充填液による希釈を補正する必要性が認められ, その補正に血漿蛋白濃度を用いるのが適当であると判断した. 以下の実験では, 血漿蛋白濃度補正値を用いた. 過酸化脂質は体外循環開始後30分から終了後30分までの間に一部(開始後60分)を除いて有意に減少した(p<0.05). この経時変化のうち, 体外循環による影響を最もよく表すと思われる初期変化(開始後30分の値)について, 更に因子別に通常の解析を行った結果, 疾患の先天性と後天性別では, 後天性群で減少し(p<0.05), 先天性群のそれと有意に異なった(p<0.05)が, その他の因子の関与は明確ではなかった. これらの成績を多変量解析によって分析した結果, 初期変化としての過酸化脂質の減少に対し, 「疾患の差異(先天性, 後天性)」が最も大きく関与し, 次に「年齢」の関与が認められた. この2つの背景因子を再検討したところ, 過酸化脂質は先天性群, 後天性群, 共に, 若年齢層で減少する傾向にあった. 以上のごとく本研究から, 過酸化脂質は体外循環によりその施行中に初期から減少したが, 減少には患者側の背景因子のうち, 後天性疾患が大きく関与し, 次いで, 年齢(傾向として若年齢層)が関与していることを認めた. |