アブストラクト(37巻10号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 高含水ポリビニールアルコールハイドロジェル人工食道の実験的研究
Subtitle : 原著
Authors : 平山雄, 江里健輔
Authors(kana) :
Organization : 山口大学医学部第1外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 37
Number : 10
Page : 2126-2133
Year/Month : 1989 / 10
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 人工食道として様々な素材によるものが考案, 試作, 研究されてきたが, 縫合不全, 狭窄, 感染などの問題が解決されておらず, 今だに臨床応用の目度がたっていない. 著者らは, 南部(日本石油株式会社中央研究所)の開発した高含水ポリビニールアルコールハイドロジェル(以下PVA-Hと略す)を管状とし, 人工食道としての有用性を検討したので報告する. 雑種成犬10頭の胸部食道を5cm切除し, 長さ5.5cmのテフロンリング付きPVA-H人工食道を移植した. 同時に, 吻合部を含め人工食道周囲をダクロンメッシュで被覆した. 移植後経時的に, 食道ファイバースコープ及び食道透視を行い, 吻合部人工食道の状態を観察した. 屠殺, 又は死亡した実験犬を, 肉眼的及び顕微鏡的に観察した. 10頭のうち6頭が耐術例であった. これら6頭についてみると, 移植後25, 35, 61日目では人工食道と宿主食道の固定は強固であり, 吻合部の肉芽組織増生による狭窄はなかった. 移植後81, 88日目では, 人工食道の肛門側への逸脱が始まり, それに伴って口側吻合部の離解, 肉芽増生による狭窄が中等度認められた. 移植後162, 165日目では, 人工食道は宿主食道吻合部より逸脱し, 口側吻合部はほとんど閉塞していた. 移植後900日目の現在生存犬では, 移植後376日目の検査で人工食道は完全に脱落していた. 口輪吻合部は軽度狭窄しているものの, 食事摂取は良好であった. 組織学的には, 移植後165日目で口側吻合部の増生した肉芽組織表面に, わずかの食道粘膜上皮再生があった. 人工食道周囲の肉芽組織内には, 炎症細胞浸潤が著明であった. 高含水PVA-H管は生体類似の物理特性と組織親和性をもち, 今後, 吻合固定法の工夫で十分に臨床応用可能と考えられた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 人工食道, 縫合不全, 高含水ハイドロジェル
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