Abstract : |
A-Cバイパスグラフト末梢側吻合部位が主要分枝より遠位におかれたときの, 逆行性血流による分枝冠動脈の血行動態を雑種成犬7頭にて検討した. 冠動脈左前下行枝(LAD)を回旋枝分岐部直下で結紮, 右頸動脈よりLADへの2又バイパスモデルを作成, LADへの吻合を第1対角枝より近位(近位吻合)と遠位(遠位吻合)におき, 一方を交互に遮断し対角枝への血流を比較した. 近位吻合から対角枝に対し順行性に灌流させたA群と, 遠位吻合から逆行性に灌流させたR群とを比較すると, 心機能には有意差は認めなかった. バイパス内の平均圧, 平均流量, 平均抵抗は有意差はなく, バイパス血流量を収縮期(SF)と拡張期(DF)に分けると収縮期にはA群11.2±2.7ml/minよりR群11.9±2.8ml/minと有意に増加し(p<0.05), 拡張期にはA群16.8±3.4ml/minよりR群15.7±3.8ml/minと減少傾向を示した. 第1対角枝血流量はA群11.2±3.0ml/minに対しR群10.3±3.1ml/minと有意に減少し(p<0.05), 対角枝血流量/バイパス血流量比もA群0.42±0.16に比しR群0.39±0.16と後者で有意に減少した(p<0.05). 対角枝血流量をSFとDFに分けると, SFはA群2.9±1.3ml/minに対しR群3.2±1.4ml/minと増加傾向を示したが, DFはA群8.3±2.1ml/minに対しR群7.1±2.2ml/minと有意に低下した(p<0.05). 以上より, 分枝冠動脈血流は近位吻合に比較して遠位吻合で減少を示し, A-Cバイパスのグラフト末梢側吻合部位は, 剥離などの問題があるにせよ, 血行動態的には冠動脈狭窄直下で可及的に順行性となる部位におかれるべきと考えられた. |