Abstract : |
心筋保護液の冠状動脈及び心筋細胞に対する生理学的, 薬理学的作用を検討するため, モルモット摘出心灌流標本, ブタ摘出冠状動脈標本, モルモット右室乳頭筋標本を用いてGIK液, St.Thomas液の作用を比較検討した. 1.モルモット摘出心灌流標本で37℃の心筋保護液の30分間持続注入中及び再灌流後の冠灌流量・心拍数・心収縮力の変化を検討した. GIK液では心筋保護液持続注入で冠血管の収縮が認められ, St.Thomas液では冠血管の拡張作用を示し, 再灌流後の心収縮力の回復率はGIK液ではSt.Thomas液に比べて有意に小さかった. 2, ブタ摘出冠状動脈標本においてはGIK液では冠状動脈の収縮作用を示し, St.Thomas液ではマグネシウムによる冠状動脈の拡張作用が認められた. 3, モルモット右室乳頭筋標本を用いた電気生理学的検討では, GIK液ではSt.Thomas液に比べて静止膜電位の脱分極の大きさは有意に大きかったが, 再灌流後の電気生理学的パラメーターの回復はほぼ同様の傾向を示した. 一方, 乳頭筋収縮力の回復率はGIK液ではSt.Thomas液に比べて有意に小さかった. 以上より心筋保護液は組成により冠状動脈及び心筋細胞に対する作用は大きく異なり, St.Thomas液はGIK液に比べて心筋保護液として好ましい性質を有していた. |