アブストラクト(37巻10号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : リング付きグラフト法の臨床的, 実験的研究
Subtitle : 原著
Authors : 丸山行夫, 江口昭治
Authors(kana) :
Organization : 新潟大学医学部第2外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 37
Number : 10
Page : 2150-2160
Year/Month : 1989 / 10
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 昭和54年2月から昭和59年11月までに, リング付きグラフトを用いて手術を行った解離性大動脈瘤と真性胸部大動脈瘤15例につき, 術中及び術後遠隔期の問題点を検討した. また動物実験を行い, リング結紮部の組織変化を調べた. 動物実験では結紮糸による大動脈壁への影響をみるため, 雑種成犬23頭を使用して平均140日後の結紮部組織変化を調べ, 10頭では更に結紮部の抗張力試験を行った. 組織所見では中膜弾性線維の完全断裂を示すものと, 肉眼的に結紮糸が大動脈内腔に露出するものが約50%を占めた. 抗張力試験では検体の切断される最大荷重は, 対照大動脈壁の100±10%以内が3例, 111%以上が3例, 89%以下が4例であり, Teflon mesh補強による抗張力の増加は認めなかった. 臨床例は男性11例, 女性4例で平均年齢は60歳であった. 15例中10例は解離性大動脈瘤で, 急性期I型3例が病院死したが1例を除き本術式との関連は認めなかった. 真性胸部大動脈瘤5例では, 弓部全置換を行った2例が術中の脳灌流障害により病院死した. 術中出血量, 手術時間の平均はそれぞれ2513ml, 8時間18分で, 本法の利点とされる出血量の減少と手術時間の短縮を認めた. 遠隔期死亡は6例で, 現在生存中の4例は術後経過も良好で, 平均観察期間は6年4カ月である. 現在本法は急性期解離性大動脈瘤, 及びpoor-riskの大動脈瘤手術に適応があると考えられるが, 術後3年4カ月にて死亡した1例で, 動物実験でもみられた結紮糸の一部が大動脈内腔に露出する所見がみられ, また6年4カ月で死亡した例では, 中枢側リング固定部からの瘤再発が原因であり, 遠隔期も厳重な経過観察を要すると考えられた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : リング付きグラフト法, 解離性大動脈瘤, 弓部大動脈瘤, 術後遠隔期成績
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