Abstract : |
静脈系に人工血管を移植した場合, 材質の選択と共に薬物を使用し開存率を高めることが重要と思われる. われわれは, 抗血小板作用をもつことがよく知られているダイピリダモールの徐放型を移植犬に投与して良好な成績を得た. すなわち, 雑種成犬の上大静脈に径10mm, 長さ20~25mmのwovenあるいはknitted Teflon graftを移植し, 術後徐放型ダイピリダモール(以下RAD)10mg/kgを1日2回に分けて投与した. その術後12日~6カ月目に屠殺してグラフト内腔の肉眼的所見, HE染色所見, 電顕所見を検討した. RAD投与群22頭のうち, 血栓形成2頭(9.1%), 内膜肥厚2頭(9.1%), 内腔の狭窄または閉塞1頭(4.5%)であった. 非投薬群18頭のうちの血栓形成9頭(50%), 内膜肥厚18頭(100%), 内腔の狭窄又は閉塞9頭(50%)であった. またRAD投薬群では電顕像にて術後5, 6週間目には一層の内皮細胞がグラフト内心を覆い, 良好な開存性が観察された. 抗血小板薬を使用することにより, 初期血栓の形成と血小板由来成長因子による内膜の過剰形成が抑制され, グラフトの開存率が高まることが確かめられた. |