アブストラクト(37巻11号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 大動脈弁置換術の予後予測因子としての大動脈complianceについての研究
Subtitle : 原著
Authors : 前田肇*, 堀原一, 酒井章, 岡村健二, 井島宏, 三井利夫
Authors(kana) :
Organization : *香川医科大学第1外科, 筑波大学臨床医学系外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 37
Number : 11
Page : 2275-2280
Year/Month : 1989 / 11
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 大動脈弁閉鎖不全症(AR)に対する大動脈弁置換術(AVR)の予後予測因子を, 大動脈の機能面から明らかにすることを目的とした. 平均年齢50±8歳のAVRを行った15例を対象とし, 術前の心エコー図及び心臓カテーテル検査所見と術後経過を比較検討した. 術後心臓タンポナーデ2例を含むが, 順調に経過した10例をI群, 重症不整脈や低心拍出量症候群を呈して治療に難渋した5例をII群とした. 術前の心エコー図から得たLVDs, LVDsI, LVDdI, PWT, %FS, 心臓カテーテル検査から得たLVEDVI, LVESVI, EF, CO, LVEDPはいずれも両群間に有意差はなかった. 心胸郭比, Sv1+Rv5, 心拍数, 末梢血管抵抗にも両群間に有意差はみられなかった. しかし, 大動脈compliance(C)がI群は(21.7±4.8)×10-4mmHg-1であるのに対し, II群は(3.8±2.1)×10-4mmHg-1であり, II群は有意に低値を示した. II群の収縮期血圧及び脈圧はI群に比して有意に大であった(P<0.01). Cの低下は左室に大きな後負荷を与えると共に, 冠動脈血流量を減少させるため, AVRによって前負荷が減少した左室と大動脈の間にcompliance mismatchを生じる. 従って, CはARに対するAVRの予後予測因子として重要な意味を有する. Cが10×10-4mmHg-1以下の症例はAVR後前負荷を比較的大きく保ち, 末梢血管抵抗を下げる治療が合理的である.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 大動脈弁閉鎖不全症, 大動脈弁置換術, 予後予測因子, 左室機能, 大動脈compliance
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