アブストラクト(37巻11号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 温阻血肺における虚血許容時間延長のための肺換気の有用性
Subtitle : 原著
Authors : 田口泰, 尾本良三
Authors(kana) :
Organization : 埼玉医科大学第1外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 37
Number : 11
Page : 2291-2297
Year/Month : 1989 / 11
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 肺移植において, 信頼性の高い肺の保存方法はいまだ確立されていない. 肺は虚血中でも酸素を容易に与えられる特異的な臓器であることに注目し, 温阻血の間, 肺を虚脱した場合と換気した場合の各々の虚血に対する抵抗性を比較検討した. 雑種犬を用い, 左開胸にて, 左肺動脈, 肺静脈及び気管支を完全に剥離した後, カーレンスチューブを用いて左右分肺換気を行った. 肺動脈, 肺静脈, 気管支動脈を遮断し, 左肺を温阻血状態とした. 換気群では, 虚血中100%酸素にて換気を行い, 虚脱群では左気管支側を開放とし, 以下の4群に分けた. I群:肺虚脱下で4時間温阻血(n=4), II群:換気下4時間温阻血(n=5), III群:虚脱下6時間温阻血(n=2), IV群:換気下6時間阻血(n=5). 血流再開10分後, 対側の肺動脈を結紮, 4時間にわたり経時的に血液ガス, 動脈圧, 肺動脈圧, 肺内シャント率を測定した. I群では, 全例再灌流後30分以内に肺水腫となって, 2時間以内に死亡した. 左肺動脈再灌流後のPaO2 376±133mmHgが, 1時間後には63±14mmHgまで低下した. II群では再灌流4時間後のPaO2 407±103mmHgであり, 肺水腫はみられなかった. III群ではI群と同様に高度の肺水腫が認められ, 30分以内に死亡した. IV群では1例において良好であったが, 他の4例のうち2例は2時間内に死亡. 2例は4時間生存したが, PaO2は2時間後で67±15mmHgと急激な低下が認められた. 以上より, 1.温阻血肺の保存では虚血中肺換気を行ったほうが, 虚脱した肺に比べて傷害が少なかった. 2.虚血中に肺を換気することにより, 4時間までの温阻血肺は臨床的にも応用し得る可能性のあることが示唆された.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 肺保存, 温阻血肺, 肺換気, 虚血傷害, 肺移植
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