アブストラクト(37巻11号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 左室収縮能(圧-容積特性)からみた慢性僧帽弁閉鎖不全症の手術予後に関する検討
Subtitle : 原著
Authors : 酒井敬, 川島康生
Authors(kana) :
Organization : 大阪大学医学部第1外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 37
Number : 11
Page : 2298-2304
Year/Month : 1989 / 11
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 慢性僧帽弁閉鎖不全症の手術予後に関して左室収縮能(圧-容積特性)の面から検討を行った. 手術症例28例を対象とし, 正常例11例を対照とした. 28例中, 術後早期の不整脈死が2例, 遠隔期の心不全死1例, 突然死2例であった. 術後臨床症状がNYHA2度以上に改善したものが21例で, 3度にとどまった症例が2例であった. 対象28例を手術により症状の改善したA群21例, 予後不良のB群7例(術後早期の不整脈死2例, 遠隔死亡3例, 術後NYHA3度にとどまった2例)に分けて検討した. A群では術前の左室拡張末期容積(EDVI), 収縮末期容積(ESVI)は162±48ml/M2, 66±21ml/M2であり, 一方B群ではそれぞれ220±48ml/M2, 143±50ml/M2であり, いずれもB群はA群に比し大であった(p<0.01). 左室駆出率(EF)はA群では0.59±0.08, B群では0.36±0.07でありB群で低値を示した(p<0.01). なお0.45を境に両群は分離した. 収縮末期壁応力(ESS)はA群では170±37kdyne/cm2, B群では250±38kdyne/cm2であり, B群で高値を示した(p<0.01). A群では正常対照群の146±26kdyne/cm2と差を認めなかった. ESS/ESVIはA群では2.66±0.68kdyne・M2/cm5, B群では1.83±0.28kdyne・M2/cm5であり, B群で低値を示した(p<0.01). 正常対照群と比べると両群共に低値であった(p<0.01). ESS-ESVI関係をみると正常対照群ではy(ESS)=2.14x(ESVI)+78(r=0.59, p<0.05)の直線関係が成立したのに対し, 慢性僧帽弁閉鎖不全症症例28例ではy(ESS)=210logx(ESVI)-206(r=0.81, p<0.001)の対数関係が成立した. B群の症例は右上方に集合し, ESVIの増加に伴うESSの増加が少なく, 左室収縮能の低下が明らかとなった. 予後不良例のB群の7例は, 全例が術前ESVIが100ml/M2, ESSが200kdyne/cm2以上の領域に属しており, EFは全例0.45以下を示した. これらの症例では左室収縮能が術前より既に低下した症例であることが明らかとなった. 以上より, 左室収縮能と手術予後の関連からみると, 少なくとも術前ESVIが100ml/M2, EFが0.45に至るまでに手術を行う必要があると考える.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 慢性僧帽弁閉鎖不全症, 手術予後, 左室収縮能, ESS-ESVI関係
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