アブストラクト(37巻11号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 重要臓器機能の多変量解析による食道癌術後合併症死の予測-臓器機能指数(OFI)の考案-
Subtitle : 原著
Authors : 斎藤貴生, 膳所憲二, 桑原亮彦, 宮原正樹, 下田勝広, 平尾悦郎, 掛谷和俊, 重光祐司, 小林迪夫
Authors(kana) :
Organization : 大分医科大学第1外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 37
Number : 11
Page : 2351-2358
Year/Month : 1989 / 11
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 食道癌患者における重要臓器機能の総合的障害に基づく術後合併症死の有無を術前に予測することを目的として, 食道癌患者の重要臓器機能と術後合併症死の有無との関連から, 多変量解析により, 重要臓器障害に基因する術後合併症死を判別する臓器機能指数(Organ function index, OFI)の算出式を作成した. 当教室で経験した食道癌108例を対象とし, 肺, 心, 肝, 腎の各機能を23項目で評価した. このうち, 術後合併症死の頻度の高かった前期(1981年10月~1985年12月)の症例で, 且つ, 異常値を有する例の少なかった5項目を除く18項目についてデーター欠損のなかった35症例の臓器機能評価値を多変量解析の対象とした. 術後120日以内に発症した手術に基づく合併症による死亡を術後合併症死としたが, その例数は35例中8例であった. 判別分析によって導き出されたOFIの算出式は, 肺, 肝, 腎機能についての7項目で構成され, 統計的にはOFI≦0の時に術後合併症死(-)を, OFI>0の時に同(+)を予測し, その的中率は91.4%であった. 次いで, 後期(1987年7月まで)の症例を含めた63例を対象とし, 術後合併症死の可能性の程度を重視した臨床上の判定基準として, OFI≦0:その可能性が軽度, 0<OFI<1.4:中等度, OFI≧1.4:高度を作成し, これを用いた食道癌切除手術の適応基準を設定した. Retrospectiveに予測した場合, OFIは術後合併症死の的中率を, 各臓器機能単独の評価で予測した場合に比して11.4%だけ向上させ, 特に, 複数臓器に軽度~中等度の障害を有する場合の危険度の判別に有用であった. 以上, OFIは食道癌患者の重要臓器障害に基づく術後合併症死を予知する指標として有用であり, 重要臓器機能からみた食道癌切除手術の適応を決定する尺度になりうると考えられた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 食道癌, 術後合併症死, 重要臓器機能, 手術適応基準, 臓器機能指数
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