アブストラクト(37巻11号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 小型人工肺を用いた自己血体外循環の安全性とその限界について
Subtitle : 原著
Authors : 金子泰史, 宮内好正, 後藤平明, 西村紀久夫, 宇藤純一, 大林弘幸, 村本一浩, 国友隆二, 岡本実, 芦村浩一*
Authors(kana) :
Organization : 熊本大学医学部第1外科, *熊本大学医学部中央手術部
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 37
Number : 11
Page : 2359-2366
Year/Month : 1989 / 11
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 1987年10月より翌年3月末までに施行した成人開心術症例36例を対象とし, 保存自己血輸血法と術中回収式輸血法に, 小児用膜型肺(VPCML)を加えた自己血体外循環の安全性, 及び, その適用限界について検討した. その結果, 36例のうち28例(78%)に自己血体外循環を, 更に, 24例(67%)には術中, 術後を通じ同種血輸血を必要としなかった. 自己血体外循環後に同種血輸血を行った症例は4例で, その原因は, 体外循環後の出血過量2例, 術後に進行した貧血2例であった. これは術前自己血貯血もさることながら, 回路内充填液量を小児用膜型肺(VPCML)の使用により少量化し, しかも, 術中は血液濃縮装置により, 体外循環中の最低Ht値を24%以上に維持し得たことによるものと思われた. また, 体重が65kgから70kgまでの症例において, VPCMLは成人用膜型肺(IFCML)と比較し, 炭酸ガス除去能,熱交換能がやや劣ってはいるものの, 体外循環を遂行するうえで, 支障なく, 安全な体外循環が可能であったことも自己血体外循環の適応を拡大し得た一因と考えられた. 自己血のみの体外循環の有用性については, 輸血後肝炎に代表される輸血後感染症がないこと, 及び, 溶血が少なく, 術後腎機能に与える影響が少ないことが挙げられた. 今後は人工肺を日本人成人の体重に合った容量に適性化することにより, 更に自己血体外循環の適応拡大に役立つものと思われる.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 自己血体外循環, 自己血, 同種血輸血, 小型人工肺, ガス交換能
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