アブストラクト(37巻12号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 開胸・開腹術の時相差による手術侵襲度に関する実験的研究-特に肺水分量の変動を中心に-
Subtitle : 原著
Authors : 津野吉裕, 武藤輝一
Authors(kana) :
Organization : 新潟大学医学部第1外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 37
Number : 12
Page : 2439-2448
Year/Month : 1989 / 12
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : モデル実験に基づき一期的食道再建先行術式の臨床的意義について考察した. 1.ラット及び家兎を用い胸部食道癌根治手術を想定した実験モデルを作成した. 開胸の時相を開腹の前・後においた開胸先行群と開腹先行群に大別し, 血清中の向副腎皮質ホルモン, 膵グルカゴン, 血清遊離脂肪酸, corticosterone, ヘマトクリット(Ht)値, 血糖値を測定した. また, 手術操作終了4時間後に両側肺を摘出し, 肺水分量の測定・組織学的検索を行った. 家兎における実験では術中動脈圧変動の記録も付加した. 2.先行術式別肺水分量では, 長時間侵襲群及び右開胸先行群に多くの肺水分貯留が認められた. 左右別肺水分量ではさらに非開胸側道にも有意の水分増加がみられた. この傾向は開胸側を逆にした左開胸における実験系でも同様に認められた. 肺病理組織所見でも間質の浮腫が特徴的であり, 開胸先行群及び非開胸側肺にその程度が強く認められた. 3.血清中向副腎皮質ホルモン, corticosterone, 膵グルカゴン, 血糖, 血清遊離脂肪酸, Htの各測定値においては各群間に有意の差がみられなかったが, 左開胸先行群により強い生体防御反応が起こっていることが示唆された. 4.術中動脈圧の変動において, 開胸先行術式群では術後の低血圧が遷延し, 呼吸循環系に及ぼす影響がより大きいと考えられた. 以上の胸部食道癌手術を想定したモデル実験より, われわれの提唱する開腹先行術式すなわち一期的食道再建先行術式は, 全身に対する手術侵襲, 特に肺に及ぼす侵襲の面から, 開胸先行術式に比し, それをより小さなものにとどめる合理性を備えたものと考えられる.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 胸部食道癌, 手術侵襲, 肺水分量, 一期的食道再建先行術式
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