Abstract : |
胸部大血管疾患における新しい画像診断として, 最近経食道超音波断層法(以下TEE)が導入され特に解離性大動脈瘤の局在, 質的診断に大きく役立っている. 今回TEEの画像診断の有用性と限界について検討した. 対象症例は昭和62年5月から昭和63年8月までにTEEを施行した解離性大動脈瘤29例(DeBakeyI型4例, II型1例, IIIa型6例, IIIb型18例)である. 剥離内膜の存在については, 29例全例(100%)で確認された. 病型診断及び流入口の描出については29例中26例(89.7%)で可能であったが3例で不明であった. 真腔・偽腔の鑑別は全例(100%)で可能であった. なお, TEEのみで剥離内膜がみられ真性瘤から解離に診断変更した例が2例あった. カラードップラー法やパルスドップラー法による解析も有用で, 特にパルスドップラー法によるフローパターン解析で真腔・偽腔の血流状態に多くの情報が得られた. 他の画像診断法(MRI, CT等)と比較した場合, TEEの長所は, 下行大動脈の病変検出に特に優れていること(小交通口の検出, 真腔・偽腔の鑑別, 血栓化の判定)があげられ, IIIa, IIIbの診断に有用であった. 短所としては, 走査範囲が限局しているため, 弓部病変の描出が困難であること, IIIa型を除きre-entryは描出不能であることがあげられた.この他TEEの独特な利点として, 術中に施行可能であること, 緊急症例にも対応できることがあげられ, 比較的簡単な操作で胸部大動脈の動的情報が得られるTEEは, 解離性大動脈瘤の診断・治療を行う上で高い有用性を持つと考えられる. |