Authors : |
北村昌也, 山崎健二, 竹村隆広, 高沢有史, 川合明彦, 椎川彰, 遠藤真弘, 橋本明政, 林久恵, 小柳仁 |
Abstract : |
1982年7月からの最近6年間に手術を行った慢性透析患者に合併した各種心疾患を検討した. 対象は透析継続下の虚血性心疾患6例, 弁膜症3例, 先天性心疾患2例の計11例で, 腎の原疾患は, 慢性糸球体腎炎4例, 糖尿病性腎症3例, 多発性腎嚢胞, 腎結核, 腎梗塞, 腹膜炎各1例であった. 術前平均21.5(最長109)月に血液透析(HD)を導入され, 4例は携行型腹膜透析(CAPD)に移行した. 手術は冠動脈バイパス術(CABG)5例, 心室中隔穿孔閉鎖1例, MVR+TAP1例, OMC+AVP(A弁形成)+TAP1例, CMC1例, VSD+PS+ASD根治術1例, ASD閉鎖+凍結手術1例であった. 手術前から除水と輸血により貧血の改善に努め, CMCとASD閉鎖+凍結手術以外の9例で人工心肺バイパス(CPB)中にHD及び限外濾過(ECUM)を併用した. 手術直後から8例に腹膜透析(内5例にCAPD)を行った. 11例中, 早期死1例(LOS), 遠隔死2例(脳出血)で, 脳出血2例はいずれも高血圧を合併し, ワーファリン投与中にヘパリン使用下のHDを行っていた. これに対しCAPD5例, ワーファリン非投与下のHD1例, FUT-175(蛋白凝固阻害剤)を用いたヘパリン非使用下のHD1例, 術後にHDを離脱した1例は, すべて長期生存している. CAPDによる血清K, Cr, BUN等のコントロールは術前後を通して良好で, 腹膜炎, 出血などの合併はなかった. 慢性透析患者に対する心臓手術には, 術前・術直後のCAPD及び術中のHD, ECUMの併用が有用であり, 内胸動脈によるCABGや弁形成術などの術後抗凝固療法を要しない術式が望ましい. ワーファリン投与が必要な場合には, トロンボテストの低値と高血圧の合併による脳出血に注意し, CAPDへの移行やFUT-175使用下のHDを考慮すべきである. |