アブストラクト(37巻12号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 新しい呼吸音の分類と呼吸器外科患者に聴取される呼吸音の分析
Subtitle : 原著
Authors : 菊池功次, 渡辺真純, 橋詰寿律, 川村雅文, 加藤良一, 小林紘一, 石原恒夫
Authors(kana) :
Organization : 慶應義塾大学医学部外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 37
Number : 12
Page : 2532-2537
Year/Month : 1989 / 12
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 近年の呼吸器病学の新しい展開と音響計測技術の発展により, 呼吸音の分類は主観的な聴覚に基づく分類から, 客観的で且つ発生機序に基づく分類へと変化しつつある. 三上らが発表した新しい呼吸音の分類はラ音を不連続性, 連続性とに分類し, 不連続性ラ音の中で, 粗い音を水泡音, 細かい音を捻髪音, また連続性ラ音を高音性の笛様音, 低音性のいびき様音の4つに分類しており, 従来わが国で用いられてきた湿性ラ音, 乾性ラ音などの表現法と異っている. われわれはこの新しい呼吸音の分類方法を用いて呼吸器外科患者の聴診所見を波形及び周波数の面から解析した. カルチノイド腫瘍により右主気管支がほぼ完全に閉塞し, 呼吸音の減弱が認められた症例において呼吸音図の振動波形から左右差を比べてみると右肺の呼吸音は左に比べ著明に減弱していることが判明した. 結核性膿胸術後に間質性肺炎の急性増悪を来した症例で聴取された捻髪音の周波数分析では200Hzと1,000Hz付近に2つのスペクトルピークが認められた. 気管気管支結核で聴取された連続性ラ音(いびき様音)の周波数分析では200Hzにスペクトルピークが認められた. また気管狭窄例において聴取された気管狭窄音を周波数分析した結果, 健常者と比べ1,000Hz周辺でのスペクトルピークの著明な増大を認めた. また気管再建手術を行ってこの狭窄部を切除した後には, 呼吸音図上1,000Hz周辺に認められたスペクトルピークは著明に減少した. この呼吸音の分析は簡便で無侵襲な検査法であり, 今後これらの所見を応用することにより外科手術後に発生する呼吸器合併症の早期診断や外科治療の効果判定に役立つ可能性が大きいと思われた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 呼吸音, 呼吸音図, ラ音, 気管狭窄, 気管狭窄音
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