Abstract : |
Perfluorochemical(PFC)のcardioplegia液としての有用性を検討するため, イヌ摘出心に灌流装置を装着し心保存の実験を行った. 酸素加PFCをcardioplegiaに用いると, 脱酸素PFCを用いた場合と比較して再灌流後の心機能の回復は良好であった. なかでも拡張期特性を示すnegative LV max dp/dtが早期より両群間に有意差を認め, 収縮期特性を示すパラメーターよりもその差が著明であった. このnegative LV max dp/dtは, 規定された一定の条件の下では左室のコンプライアンスのみならず, 左室予備能力をも反映していると考えられ, 心機能を評価する上で重要なパラメーターになり得ると思われた. 代謝面においては, 心停止中に十分な酸素供給がなされていないと心停止中のみならず再灌流後も好気性代謝への回復が遅延して心筋傷害が強く現れた. こういった状況下では心筋内カテコールアミンの有効利用は困難であり, 血行動態の回復に対しても悪影響を及ぼしていると考えられた. 以上より, 酸素加PFCをcardioplegia液に用いたことにより安定した心保存が得られ再拍動後に好影響を及ぼすことが示唆され, 臨床的にも優れた心保存液になりうると考えられた. 残された課題としてはfree radicalによる心筋傷害の防止があげられ, 至適酸素濃度, 灌流法などに関して更に研究を重ねる必要があると思われた. |