アブストラクト(37巻9号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 肺真菌症14例の臨床像と外科治療
Subtitle : 原著
Authors : 山中晃, 北野司久, 辰巳明利, 松井輝夫, 山下直己, 黄政龍
Authors(kana) :
Organization : 天理よろづ相談所病院胸部外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 37
Number : 9
Page : 1893-1900
Year/Month : 1989 / 9
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 外科治療の行われた14例の肺真菌症を経験し, 臨床像, 外科治療について検討した. 14例のうち, アスペルギルス症は9例, クリプトコッカス症は5例であった. 年齢は19歳から71歳, 平均48.0歳で, 性別は男性10例, 女性4例であった. 自覚症状を有したのは11例で, その内訳は喀血ないし血痰が4例, 胸痛, 発熱が各3例, 咳嗽, 喀痰が各2例であった. アスペルギルス症9例のうち, 呼吸器系疾患の既往ないし合併症を有したのは5例で, 肺化膿症2例, サルコイドーシス, 非定型抗酸菌症, 気胸各1例であった. 病型分類では, 菌球型アスペルギルス症4例, 肺アスペスギルス症3例, アスペルギルス膿胸2例であった. このうち, 既存空洞に発生したことが確認されたものが3例であった. クリプトコッカス症5例の画像的分類では腫瘤型3例, 小結節散布型, 浸潤陰影各1例で, 結核の合併が1例にみられた. 14症例のうち, 術前診断が真菌症となされたのは5例で, 他は肺結核4例, 肺癌3例, 膿胸, 水気胸各1例であった. 手術内容は肺部分切除術4例, 肺葉切除術8例, 膿胸郭清・肺全摘術, 膿胸郭清・筋肉弁充填・胸郭成形術が各1例であった. いずれも良好な術後成績が得られた. 菌球型アスペルギルス症では全身投与による薬剤の移行性が低く, 病理組織学的に周囲の肺組織に真菌浸潤癌がみられず, 血行性播種はほとんどない. 従って, 菌球型アスペルギルス症に対しては外科的治療が第1選択として挙げられるべきである. クリプトコッカス症のうち, 孤立性症例は外科治療の良い適応であるが, 手術時の播種もありうることから, 完全切除例においても化学療法の併用がなされるべきである.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 肺真菌症, 肺アスペルギルス症, 肺クリプトコッカス症, 外科治療
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