アブストラクト(37巻9号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 胸部下行大動脈遮断時の脊髄虚血障害発生予防に関する臨床的研究-脊髄灌流圧及びSEPモニタリングの有用性について-
Subtitle : 原著
Authors : 前田信証, 宮本巍, 村田紘崇, 山下克彦, 岩岡聡, 安岡高志, 原裕, 上田哲也
Authors(kana) :
Organization : 兵庫医科大学胸部外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 37
Number : 9
Page : 1923-1931
Year/Month : 1989 / 9
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 大動脈遮断末梢側・平均動脈圧(MDAP)と脳脊髄液圧(CSFP)との圧差である脊髄灌流圧(SCPP)と体性感覚誘発電位(SEP)の術中モニタリングを, 胸部下行及び胸腹部大動脈瘤手術症例24例に施行し, CSFP及びSCPPの脊髄虚血に及ぼす影響について臨床的検討を加えた. 補助手段としては一時的体外バイパス法を10例に, 部分体外循環法を14例に用いた. 大動脈遮断中のMDAPは平均72.5±13.0mmHg, CSFP遮断前平均10.1±4.3mmHgより遮断後平均15.0±5.8mmHgに上昇し(p<0.01), SCPPは平均59.8±15.0mmHgであった. 遮断中のSEP虚血性変化は6例にみられ, 消失が4例, 低下が2例であった. SEPが消失した4例中SCPPが各々32, 35mmHgであった2例に術後対麻痺が発生した. SEPが消失した他の2例及び低下した2例では, SEPが低下した時点でMDAPの上昇ないし脳脊髄液吸引を行い, SCPPを60mmHg以上に維持した. この結果SEPが消失した2例では, 大動脈遮断時間が175分と最長であった1例は遮断解除後直後より, 他の胸腹部大動脈瘤の1例は第11肋間動脈を再建した直後よりSEP波形は回復し, SEPが低下した2例ではSCPPを上昇させることにより徐々に波形の回復がみられた. SEPに虚血性変化がみられなかった他の18例ではSCPPは40mmHg以上に維持されており, 術後対麻痺の発生はみられなかった. 以上の結果, 大動脈遮断時に発生する脊髄虚血障害発生の予防には, MDAPの上昇ないし脳脊髄液吸引により, 1.SCPPを40mmHg以上に維持する. 2.SEPの虚血性変化がみられた場合はSCPPを60mmHg以上に維持する, 3.以上の条件下でSEPが急速に低下・消失する時はAdamkiewicz動脈を遮断した可能性が高く, 直ちに重要な肋間・腰動脈を再建することが重要であると思われた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 脊髄虚血障害, 脊髄灌流圧, 脳脊髄液圧, 体性感覚誘発電位
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