Abstract : |
リウマチ性病変を呈した大動脈弁病変に対し, Debridement法の1手段として, 電動のヤスリで弁表面の肥厚部分を削り取るRasping法なる手技を考察した. そこで, 摘出大動脈弁標本を用いて, Rasping法後の弁表面の性状を病理組織学的に検討した. リウマチ性病変を呈した摘出大動脈弁標本をその病変の程度に応じ以下の3型に分類した. I型:弁葉の遊離縁のみの肥厚, II群:弁葉全体の肥厚, III型:弁葉全体の高度の肥厚に石灰化病変を伴う, 各群各々にRasping法を施行した. H-E染色にて弁の病理標本を作成した. I型は, 弁の遊離縁のみ硝子様の結合織が, 膠原線維層の上層に存在し, Rasping法により硝子様の結合織層が削り取られているのが認められた. II型は正常部分と肥厚部分の境界は不明瞭であるが, 弁の表面に粗い硝子様の結合織層が存在し, Rasping法によりこの硝子様の結合織層が削り取られているのが認められた. 更にII型でメスによりslicing法を施行したところ, 弁表面にはメスによる鋭い亀裂が認められた. III型は, 石灰化部分に対してRasping法を施行したが, 石灰化部分に組織の断裂が生じた. 以上の結果より石灰化病変を伴わない軽度~中等度の大動脈弁病変に対しては, Rasping法により良好な弁表面の性状が得られた. しかし, 石灰化病変を伴う弁病変に対しては, 組織の断裂を認めたことよりRasping法では十分な弁機能は得られないと考えられる. |