Abstract : |
開心術や心移植における虚血心の心筋温と心筋保護効果の関係, 特にcold injuryの急性期から慢性期に至る影響を検討するため, 近交系ラット間の異所性心移植モデルを用い実験的検討を行った. 摘出心をcontrol群, 0℃保存群, 5℃保存群, 10℃保存群, 15℃保存群, 20℃保存群に分けて120分間(control群は15分)単純浸漬保存後, Ono-Lindsey法に従いrecipientの腹部に異所性に移植した. 急性期及び慢性期のそれぞれの実験を行い, 急性期実験では電顕像と血清酵素(CPK, LDH, GOT)を指標とし, 慢性期実験では拍動の観察と心筋組織の線維化率を指標とした. その結果, 20℃保存群は全例蘇生しなかった. 急性期の各指標によると10℃保存群, 15℃保存群の障害が強く他は差がなかった. しかし, 慢性期の線維化率は, control, 0℃, 5℃, 10℃, 15℃の各群それぞれ5.31±3.83%, 2.44±2.00%, 6.02±2.61%, 42.9±31.8%, 46.9±14.3%と0℃保存群が最も低く, 心筋温が低いほど障害は軽度であった. 以上より心筋だけに限ってみれば心筋温は凍らない程度に低いほど保護効果があると考えられ, cold injuryは存在しても2時間程度の虚血では軽度で一過性のものである可能性が示唆された. また急性期の心筋は変動が大きく急性期の評価のみでなく慢性期の評価も虚血による障害の総合的な判定には必要と考えられた. |