アブストラクト(38巻2号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 急性心筋梗塞後, 左室自由壁破裂の外科治療
Subtitle : 原著
Authors : 小坂真一, 田中茂夫, 池下正敏, 浅野哲雄, 田村浩一*, 高野照夫**, 田中啓治**, 加藤貴雄**, 山手昇***, 庄司佑
Authors(kana) :
Organization : 日本医科大学胸部外科, *日本医科大学病理学, **日本医科大学集中治療室, ***聖マリアンナ医科大学第3外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 38
Number : 2
Page : 248-255
Year/Month : 1990 / 2
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 急性心筋梗塞(AMI)後の左室自由壁破裂(LVFWR)は最も予後不良な致死的合併症である. 特にelectromechanical dissociation(EMD)に陥ったものは, ほとんど救命の可能性はなく, わずかにEMDに至るまでにLVFWRの診断を行い得た症例のみが, 外科治療によって救命し得るとされている. 昭和59年3月から62年6月までに12症例のAMI後のLVFWRに対して開胸ドレナージ以上の外科治療を行った. 内訳は急性型(blow out型)8例, 亜急性型3例, 慢性型1例で, 亜急性の2例を除いて全例EMDに陥っていた. 12例中, 急性型の2症例と亜急性型の2例の計4例を救命し得た. 救命例のうち, 3症例(急性型2例, 亜急性型1例)はEMD例で, 体外心マッサージ, 気管内挿管を行いながら直ちに, 左第4肋間開胸・心膜切開により減圧し, 体外循環を用いずに破裂部をテフロンフェルト付き水平マットレス縫合で閉鎖した. 他の1例は心室中隔穿孔を合併していた亜急性型の重複破裂例で, 体外循環下に中隔穿孔部と破裂孔をパッチ閉鎖した. この症例では心室中隔穿孔と心タンポナーデによる心原性ショックが主症状でありEMDにはならなかった. 救命例中3例にIABPを使用した. EMDに陥ったLVFWRでは人工心肺による体外循環を確立する時間的余裕はなく, ベッド上での緊急肋間開胸による破裂孔の縫合閉鎖を試みるのが最良の救命方法と考えられた. この際, 前壁あるいは側壁梗塞で破裂孔が小さくslit状のものが最も有利であり, IABP使用, barbiturate投与は, 心マッサージ下の心断層エコーによる迅速診断と共に救命成功に重要な役割を果した. 人工心肺による体外循環は間に合わないことがほとんどであり, 体外循環を用いないでも救命例が得られることより, 急性型のLVFWRの救命において必ずしも心要不可欠な補助手段とは思われなかった.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 急性心筋梗塞, 左室自由壁破裂, Electromechanical dissociation, 緊急肋間開胸, 重複破裂
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