アブストラクト(38巻3号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : Terminal Cardioplegia法による再灌流障害予防に関する実験的検討
Subtitle : 原著
Authors : 折田博之, 島貫隆夫, 深沢学, 阿部寛政, 倉岡節夫, 広岡茂樹, 鷲尾正彦
Authors(kana) :
Organization : 山形大学医学部第2外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 38
Number : 3
Page : 370-376
Year/Month : 1990 / 3
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 当教室では, これまで再灌流後の組織Ca総量の変動及びfree radicalによる細胞障害について検討してきたが, 今回われわれは, 再灌流障害予防という観点から, 再灌流直前に冠血管拡張薬(Nicorandil)及びMgを含む晶質液を冠灌流することによる(terminal cardioplegia法, 以下TCP法)効果について検討した. 実験は, 雑種成犬19頭を用い, 体外循環下, 4℃GK液による心停止後, 心室中隔にCaイオンセンサー及びPCO2, 温度センサーを刺入した. 虚血時間は90分とした. 虚血後直ちに再灌流した群をA群(n=10), 2分間のTCP施行後再灌流した群をB群(n=9)とし, 虚血, 再灌流時を通して心筋組織Caイオン, PCO2をモニターし, 再灌流後は, 組織血流, 乳酸摂取量, 酸素消費量及び心機能を測定した. 虚血時, 組織Caイオンは両群共に上昇したが(A : 0.4mM→2.8mM, B : 0.3→3.1), TCPを施行したB群では, 再灌流時, 有意に低下し(A : 2.8mM, B : 2.2, p<0.05), 再灌雨後の低下も速やかであった. 組織PCO2も再血流5分で有意に低下した(A : 117.5mmHg→85.2mmHg, B : 127.5→42.5, p<0.001). 組織血流では, 虚血前に対する回復率は, 再灌流5分でA群29.4%, B群42.7%であり, B群で良好であった. また, 乳酸摂取量では, 再灌流5分よりB群で良好な摂取状態がみられ, 酸素消費量では, 20分以後でB群に多い傾向がみられた. 心機能の回復も, B群で良好であった. 結論 : TCP法により, 再灌流直後より良好な組織血流が維持され, 結果として組織よりのCaイオン及びCO2の良好なwash outが認められた. また, 心筋代謝の改善及び心機能の回復も良好であった.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : terminal cardioplegia, 再灌流障害, 組織Caイオン, Nicorandil, Mg
このページの一番上へ