Authors : |
原洋1), 青柳成明1), 平田義博1), 明石英俊1), 古賀正之1), 麻生公1), 藤野隆之1), 田代忠2), 小須賀健一1), 大石喜六1) |
Abstract : |
広範囲肺動脈塞栓症の外科治療症例は, わが国では欧米に比し極めて少ないが, われわれは6例中5例を手術により救命した. 症例は, 男性2例, 女性4例で29歳から68歳で平均年齢49.3歳であった. 本症の誘因として静脈血栓症1例, 下肢静脈瘤1例, 左股関節術後8日, 14日の各1例, 腹部手術後10日の1例及び乳がん根治術後8日の1例であった. 初発症状は全例胸痛, 胸内苦悶, 呼吸困難があり2例に突然の失神が見られ人工呼吸を要するものが3例あった. EKGで右心負荷, 超音波断層検査で右心系拡大所見を認めた. 心血管造影は全身状態不良のため施行し得なかったが, 肺血流シンチでは還流欠損領域は80%から50%であった. 体外循環下に肺動脈血栓摘除術を施行した. 発症より手術迄の時間は7時間から8日間で, 19時間以内の手術では血栓摘出は極めて容易で, 主肺動脈切開のみで左右の肺動脈分枝まで摘出可能であったが, 6日以降の症例では, 血栓が血管内壁に固着し末梢肺動脈切開が必要であった. 術後ワーファリンによる抗凝血療法を3ヵ月間行った. 本症は急激な臨床経過をとるため, 早期の確実な診断のもとヘパリン, 血栓溶解療法で改善の傾向が無ければ早期手術を決断すべきで, 手術は容易で安全であり術後経過も良好である. |