アブストラクト(38巻7号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 甲状腺機能低下症を伴う虚血性心疾患の外科治療
Subtitle : 原著
Authors : 澤重治, 川筋道雄, 辻口大, 竹村博文, 手取屋岳夫, 岩喬
Authors(kana) :
Organization : 金沢大学医学部第1外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 38
Number : 7
Page : 1106-1111
Year/Month : 1990 / 7
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 甲状腺機能低下症を伴う虚血性心疾患は, 甲状腺ホルモン補充療法によって狭心症の増悪や心筋梗塞を発症しやすく, 冠動脈病変に対する外科治療が優先される. その際問題となる術前の甲状腺治療をどの程度に行うか, 手術侵襲が甲状腺機能及び循環動態にどの様な影響を及ぼすかの2点につき, 甲状腺機能正常例を対照群として比較検討した. 甲状腺機能低下症例は5例で, 術前のL-Thyroxine0~75μg/dayの投与により軽度(T4:2.4~6.4μg/dl)の甲状腺機能低下状態となった時点で冠動脈バイパス手術を施行した. 対照群の術後甲状腺機能は術直後, 一過性に大きく低下した後1週間で術前値に回復した. これに対し甲状腺機能低下群のT4は低下することなくほぼ一定であった. これにより手術によって下垂体甲状腺機能は一過性に低下するが, 甲状腺機能低下群では適切な補充療法により甲状腺機能は術後, 過度の低下を来さないことがわかった. また心機能は術前, 術後とも両群間に有意差は無かった. 軽度甲状腺機能低下状態での冠動脈バイパス手術の安全性が確認された. 甲状腺機能低下群は全例L-Thyroxineの増量が可能となり, 術後1-2ヵ月でeuthyroidとなった. 甲状腺機能低下症を伴う虚血性心疾患は術前に極小量の甲状腺ホルモン補充を施すことによって安全に冠動脈バイパス術を施行できる.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 甲状腺機能低下症, 虚血性心疾患, 冠動脈バイパス術, 術後甲状腺機能
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