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嚥下困難を主訴として来院し, 術前食道平滑筋腫と診断したが, 術中に胸管嚢胞と診断された, 72歳男性の症例を報告する. 術前検査では, 食道は後縦隔に存在する円形の腫瘤により前方へ大きく偏位しており, その境界は不明であった. 食道平滑筋腫と診断し, 手術を施行した. 右第6肋間にて開胸すると, 後上縦隔に, 7.5×4.5×4.5cmの, 表面平滑, 弾性硬, 乳白色の嚢胞状腫瘤を認めた. 胸管と連続しており, 胸管嚢胞と診断した. 胸管を切断し, 腫瘤を摘出した. 術後経過は順調であり, 自覚症状は消失した. 縦隔内胸管嚢胞は現在までに18例の報告例があるにすぎないまれな疾患であり, 術前診断には, 針生検, リンパ管造影, CT検査が有用である. 縦隔腫瘍の中で, 胸管嚢胞は極めてまれな疾患である. 心疾患は1892年Carbone1)により初めて剖検例として報告され, 1950年Emersonら2)が最初の治療例を報告したとされている. その後, 症例報告が見られるが, 現在までにわれわれが検索し得た範囲では, 縦隔内胸管嚢胞は19例2)～20)の報告があるにすぎない. 最近, われわれは, 嚥下困難を呈した胸管嚢胞の1例を経験したので, 文献的考察を加えて報告する. |
