アブストラクト(38巻8号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 31P-MRSによるラット摘出保存心における臓器活性に関する研究-第1報- -低温単純浸漬保存法と低温低圧持続灌流保存法の比較検討-
Subtitle : 原著
Authors : 岩本広二, 臼井典彦, 木下博明
Authors(kana) :
Organization : 大阪市立大学医学部第2外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 38
Number : 8
Page : 1262-1269
Year/Month : 1990 / 8
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 31P核磁気共鳴スペクトロスコピーを用い, ラット12時間低温単純浸漬保存心(SI群)並びにラット24時間低温低圧灌流保存心(CP群)の高エネルギー燐酸を経時的に測定し, 保存後再拍動時心機能とあわせ両保存法を比較検討した. SI群でATPは保存開始後12時間で保存開始直後のコントロール値の14.8±4.1%となり, PCrは保存開始後3時間で同じくコントロール値の27.3±6.2%と急速に減少したが, その後は約30%を維持した. CP群ではATP, PCrは完全に保存され, 保存開始後24時間でそれぞれ保存開始直後の99.1±2.6%, 119.6±6.7%であった. またATP/Pi比はSI群で12時間後5.4±0.7%, CP群で24時間後62.2±5.8%であった. LV dP/dtは3時間単純浸漬保存後(3-SI群)で96.6±11.5%とコントロール群と有意差はなかったが, 6時間単純浸漬保存後(6-SI群)で122.7±0.2%と有意(p<0.01)に高値を示し, また9時間単純浸漬保存後(9-SI群), 及び24時間灌流保存後(24-CP群)でそれぞれ80.8±4.6%, 67.8±8.2%と有意(p<0.01)に低値を示した. Rate-pressure productは3-SI, 6-SI群ではコントロール群と有意差なく回復したが, 9-SI, 24-CP群ではそれぞれコントロール群の74.2±3.7%, 53.9±11.0%と有意(P<0.01)に低値を示した. 以上の結果, 臓器活性低下の指標としてのATP/Pi比の有用性及び24時間持続灌流保存法での高エネルギー燐酸濃度と保存後再拍動時心機能との乖離が, 冠血流不全に加えてATPの不均等な消費によるものである可能性が示唆された. また単純浸漬保存法では7-8時間で不可逆的な細胞障害が顕在化し, 灌流保存法では高エネルギー燐酸がほぼ完全に保存されることから, 摘出心長期保存には臓器灌流が必須であると思われた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 31P核磁気共鳴スペクトロスコピー, 低温単純浸漬摘出心保存法, 低温低圧灌流摘出心保存法
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