アブストラクト(38巻8号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 31P-MRSによるラット摘出保存心における臓器活性に関する研究-第2報- -adenosine投与による摘出保存心の臓器活性の回復について-
Subtitle : 原著
Authors : 岩本広二, 臼井典彦, 木下博明
Authors(kana) :
Organization : 大阪市立大学医学部第2外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 38
Number : 8
Page : 1270-1277
Year/Month : 1990 / 8
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 31P核磁気共鳴スペクトロスコピーを用いてラット摘出心5時間低温単純浸漬保存後のアデノシンの灌流投与による高エネルギー燐酸の回復を計測し, アデノシン投与後再拍動時心機能と合せて低温単純浸漬保存心の臓器活性の回復について検討した. 単純浸漬保存開始後5時間でATPは保存開始時の47.2±6.6%, PCrは28.0±8.6%に減少した. 1時間のアデノシン加再灌流液の灌流後アデノシン投与群(ADN群)でATPは灌流開始時のコントロール値の147.2±2.3%に増加したが, 再灌流のみを行ったアデノシン非投与群(non-ADN群)では103.8±2.3%であった. PCrはADN群, non-ADN群で各々127.4±5.6%, 115.8±8.3%に回復した. 再拍動開始3時間後, LV dP/dtはADN群で3,330±116mmHg/sとコントロール群の3,034±60mmHg/sと有意差なく保たれていたが, non-ADN群では2,516±201mmHg/s(p<0.05), 無処置6時間単純浸漬保存群(6-hr群)では2,274±207mmHg/s(p<0.01)と有意に低下していた. non-ADN群, 6-hr群間に有意差は認めなかった. rate-pressure productはADN群で19,350±1,154とコントロール群の20,899±709と有意差なく保たれていたが, non-ADN群では14,559±1,339(p<0.01), 6-hr群では12,781±2,379(p<0.05)と有意に低下していた. non-ADN群, 6-hr群間に有意差は認めなかった. すなわち, 摘出後低下した細胞内ATP濃度はアデノシンの灌流投与によりほぼ完全に保存開始時のレベルに回復, 拍動再開後3時間の心拍動後にも心機能は心摘出直後と有意差なく維持されており, アデノシンの灌流投与により5時間低温単純浸漬保存心の臓器活性の回復が可能であることが示された.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 31P核磁気共鳴スペクトロスコピー, 低温単純浸漬摘出心保存法, 臓器活性, アデノシン
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