アブストラクト(38巻10号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 両側内胸動脈あるいは内胸動脈Sequentialグラフトによる冠動脈多枝バイパス手術
Subtitle : 原著
Authors : 北村惣一郎, 河内寛治, 森田隆一, 西井勤, 関寿夫, 谷口繁樹, 川田哲嗣, 福富正明, 水口一三
Authors(kana) :
Organization : 奈良県立医科大学第3外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 38
Number : 10
Page : 2097-2104
Year/Month : 1990 / 10
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 平成元年末までに内胸動脈(ITA)を用いた冠動脈多枝バイパス手術を87例に行った. ITA使用バイパス手術全例の23.4%であった. 両側ITA使用67例, sequentialグラフト使用16例, 両者の併用4例である. 対象は動脈硬化性病変75例(24~76歳, 平均53±10歳)と川崎病病変12例(3~14歳, 平均9.7±3.3歳)で男性80例, 女性7例であった. 動脈硬化性病変群では陳旧性梗塞が61%, 糖尿病合併が32%にみられ3枝病変, 左主幹動脈病変が85%を占めた. 術前NYHA分類ではII度33%, III度53%, IV度14%であった. グラフト数は2~5本, 平均3.2±0.7本/患者でL(左)ITA-LCX(回旋枝), R(右)ITA-LAD(左前下行枝), LITA-Dx(対角枝)-LADが最多の使用法であった. 早期死亡及び遠隔期死亡率はいずれも0%であり, 術後には95%がNYHA I度に回復し, 良好な結果が得られた. 問題点としては無輸血手術が17%と少なくなること以外特異なものはみられなかった. 合併症では手術近接期梗塞4.6%, IABP使用3.4%, 再開胸止血術4.6%であったが一側ITAによるバイパス例の場合と差はなく, 最も危惧される胸骨感染症は予防し得た. グラフト開平率はRITA(n=71)93%, LITA(n=71)96%, sequentialグラフト中枢側吻合(n=17)100%, 末梢側吻合100%でLITA 1本使用の場合の開存率と差は無く良好であった. ITAによる冠動脈多枝バイパス手術は緊急手術例などを除く一般状態の良好な患者に行えば安全で極めて良好な臨床結果が得られた. また両側ITAは幅広い年齢層(3~76歳)にわたって使用しえ, 冠静脈洞血流量(CSF)測定の結果からみて両側ITAによる左冠系の完全血行再建は十分可能であると判断した.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 内胸動脈グラフト, 冠動脈バイパス手術, 両側内胸動脈, sequentialグラフト
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