アブストラクト(38巻11号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : Bentall手術の予後因子に関する臨床・統計学的検討
Subtitle : 原著
Authors : 清野隆吉, 小柳仁
Authors(kana) :
Organization : 東京女子医科大学日本心臓血圧研究所循環器外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 38
Number : 11
Page : 2177-2193
Year/Month : 1990 / 11
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 1972年3月から1988年12月までの16年間に当科で施行したBentall手術施行例93例を対象に, その手術成績向上因子を統計学的に検討した. 対象疾患の内訳は, 単独大動脈弁輪拡張症61例, I型大動脈解離20例, II型大動脈解離12例であり, 冠動脈血行再建術式は, 直接一層吻合22例, 直接二層吻合52例, 両側interposition graft法9例, interposition graft法と直接二層吻合の組合せ2例, 腕頭動脈-冠動脈バイパス法と直接二層吻合の組合せ7例, interposition graft法と腕頭動脈-冠動脈バイパス法の組合せ1例に分類された. ロジスティック回帰解析で分析した早期予後因子は術後重症不整脈(p=0.0498)で, 心筋保護法の導入後, 発生率の減少傾向がみられた(p=0.12). 生存退院した81例の遠隔期予後因子をCox比例ハザードモデルで解析すると, ①人工血管吻合部縫合不全(遠隔期予後関連因子:p=0.2394), ②術前大動脈解離(遠隔期予後規定因子:p=0.0079), ③残存大動脈解離(遠隔期予後規定因子:p=0.0035)の3因子が最終的に選定された. ①因子の主因である冠動脈口吻合部縫合不全は直接一層吻合から二層吻合へ術式を修飾することにより, 累積非再手術率(p=0.05), 縫合不全非発生率(p=0.0003)は, 統計学的有意差をもって向上し, 累積生存率(p=0.09)は改善傾向を示した. また, バルサルバ洞拡大が軽度(最大大動脈根部横経:平均50mm)で, 冠動脈口頭側変位の少ない(大動脈弁輪部-冠動脈口距離15mm以下) I・II型大動脈解離や瘤偏在型大動脈弁輪拡張症では, interposition graft法や腕頭動脈-冠動脈バイパス法が縫合不全対策に有効であった. ②, ③因子に対しては, 造影CTスキャンによる厳密な遠隔期追跡と二期手術の積極的導入が遠隔成績の向上要因と考えられた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : Bentall手術, 冠血行再建法, 冠動脈口直接二層吻合, Cox比例ハザードモデル, 予後因子
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