アブストラクト(38巻11号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 食道癌切除再建術後呼吸管理における肺血管外水分量測定の有用性-特に熱とナトリウムを用いた2重指示薬希釈法について-
Subtitle : 原著
Authors : 渡辺敦, 草島勝之, 川原田修義, 小松幹志, 杉本智, 道井洋吏, 田中明彦, 竹田晴男, 三品寿雄, 小松作蔵
Authors(kana) :
Organization : 札幌医科大学第2外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 38
Number : 11
Page : 2224-2230
Year/Month : 1990 / 11
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 食道癌患者21例を対象に, 食道癌術後呼吸管理の一指標として熱とナトリウム二重指示薬希釈法により肺血管外水分量(EVLW:Extra Vascular Lung Water)を他の呼吸循環諸量と共に測定し, 術後EVLWの動態とEVLW測定の有用性に関して検討し, 以下の結果を得た. 1. 肺合併症非発症例16例のEVLWを体重1kgに換算したEVLW Index(EVLWI)の動態は術前5.3±0.2ml/kgで, 術直後4.8±0.4ml/kgと有意に低下した. 術後24時間目に, ほぼ術前値に回復し, 以降変動しなかった. 経過中, 一過性に正常上限と考えられる7.5ml/kgを越えた症例は3例で, いずれも12時間以上は持続せず, 最大値も10ml/kg以下であった. 2. FiO2 0.4でのPaO2は術前207±9mmHgであり, 術直後164±9mmHgに低下し, 術後48時間目に最低値120±10mmHgとなった. 膠質浸透圧肺動脈楔入圧較差(COP-PCWP)は術前19.1±0.7mmHgであり, 術後12時間目に最低値15.0±0.4mmHgとなり, 術後60時間目に術前値に回復した. 3. 肺合併症を発症した5例のうち肺水腫症例では, EVLWIは術後正常であり, 術直後, 他の指標が著明に変化しないうちに10ml/kg以上に急増し, 術後72時間目まで高値が持続した. 経過中, EVLWIとCOP-PCWPとの有意な相関は見られなかった. 以上の結果から, 食道癌術後の低酸素血症には, EVLWの変化はほとんど関与していないこと, 食道癌術後急性期の肺水腫は, 単純な圧勾配に起因するものではないことが示唆された. 食道癌術後管理の1指標として, EVLWの測定は肺合併症の病態の把握及び肺水腫症例の早期診断に有用と考えられた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 食道癌手術, 肺血管外水分量, 熱とナトリウム, 二重指示薬希釈法, 肺水腫
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