アブストラクト(39巻1号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 術後造影からみた内胸動脈-左前下行枝血行再建術の特徴-内胸動脈グラフトの適応とstring sign発現について-
Subtitle : 原著
Authors : 保浦賢三1), 岡本浩1), 松浦昭雄1), 秋田利明1), 沢崎優1), 阿部稔雄1), 小川裕2), 関章3), 星野元昭4), 朝倉貞二4)
Authors(kana) :
Organization : 1)名古屋大学医学部胸部外科, 2)市立小牧市民病院心臓外科, 3)市立岡崎病院心臓外科, 4)公立陶生病院心臓外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 39
Number : 1
Page : 14-19
Year/Month : 1991 / 1
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 内胸動脈(ITA)を用いた冠血行再建術(CABG)は遠隔期の開存性が優れていることから最近広く普及しつつある. しかしITAグラフトは従来よりその流量予備力に問題があるとされ, 狭窄の軽度な冠動脈に吻合した場合にはITAの末梢が先細りとなるstring signを示すこともあるとされている. 著者らはITAを前下行枝(LAD)へ吻合した101例の術前後の冠動脈造影及びグラフト造影検査を検討して以下の結果を得た. すなわち, LADの75%未満の狭窄例ではITAからの血流は吻合部より末梢に流れるのみでnative LADの血流に競り負ける傾向があり, 一部にはstring signを認める症例も存在した. 一方, 75~90%の狭窄例ではITAからの血流は吻合部より逆行性に狭窄部分の近傍まで灌流する形態を示し, 90%以上の狭窄例ではnative LADの病変の進行, すなわち完全閉塞の所見を認める例が多く見られた. native LADの病変進行(完全閉塞)に至る要因として, 1. ITAのfree flow 2. LADの狭窄程度 3. LADの灌流形態 4. LADの病変位置の4つの要素を取り上げて検討したところ, 術後のnative LADの病変進行には術前の狭窄程度が最も大きな役割を示すことが判明した. 今回の著者らの検討からはITAのfree flowがほぼ60ml/min前後で, 且つ狭窄程度が75%以上のLAD病変にITAを吻合するならば, 術後のLADの狭窄部より末梢の血流はITAにより維持されることが明らかとなった. またこのシリーズにおいて3例のsuperdominantの右冠動脈に合併した左主幹部単独病変に対してITA 1本のCABGを施行したが術中術後に特に問題はなかった.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : ITA-CABG, ITAの流量予備力, string sign, native冠動脈の病変進行, LMT病変
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