Abstract : |
肺移植後早期の一過性肺機能低下に対するPGI2, SODの効果を犬肺移植モデルを用いて, 肺循環の面から術後2週間にわたって検討した. 雑種成犬25頭を以下の4群に分けた. 第1群7頭では左開胸にて左肺門部の剥離を行い, 第2群6頭では左肺門剥離後左肺に1時間の温阻血を加えた. 第3群6頭では第2群と同じ操作を行ったが, 温阻血操作前よりPGI21μg/kg/minを30分間点滴し, 再灌流直前にSOD 20mg/kgを静注した. 第4群6頭では左肺同種移植を行ったが, ドナー肺摘出中にドナー犬にPGI2を, また, 再灌流直前にSODをレシピエント犬に投与し術後免疫抑制を行った. これら4群において上行大動脈, 左主肺動脈にドプラー血流計を装着し, 術後2週間にわたり心拍出量, 左肺動脈血流量及び肺動脈圧を測定し, 血液ガス採血, 胸部X線撮影を行った. 結果は, 第3群, すなわちPGI2, SODを投与した温阻血群においては, 投与しなかった第2群に比べて左肺動脈血流量, 動脈血酸素分圧, 胸部X線所見の何れもが有意に良好な成績, 又は所見を示した. 左肺同種移植を行い且つPGI2, SODを投与された第4群では左肺動脈血流量の低下, 左肺血管抵抗の上昇が見られたが, 動脈血酸素分圧, 胸部X線所見は第2群よりも良好であった. 病理組織所見は, 第2群において血管内皮細胞の浮腫, 空胞形成, 血液凝固第8因子の消費が認められたが, 第3群ではそれらの変化が軽度であった. 以上よりドナー肺に対するPGI2の前処置及び再灌流前のSOD投与は移植肺の肺動脈血流を温存すると共に術直後の肺機能低下予防に対し有効であると思われた. |