Abstract : |
1978年7月から1986年12月迄に行われた心臓血管手術症例のうち, 剖検及び切除標本の病理所見より腸管の血行障害を証明できたものが24例あった. そのうち, 器質的閉塞病変を認めなかった非閉塞性腸管虚血は9例(男8例, 女1例)であった. 基礎疾患は後天性弁膜症4例, 冠動脈疾患2例, 血管疾患3例であり, 術式は弁置換術3例, 冠動脈再建術2例, Bentall手術1例, 胸部及び腹部人工血管置換術3例で, 小児先天性心疾患では1例も認めなかった. 全例, 術後重篤なLOSを呈し, 人工血管置換術を受けた3例を除き6例でIABPを必要とした. 腎機能は術後早期より悪化し, 腹膜透析ないし血液透析を必要とした. 腹部, 及び血清学的な異常所見を認めたが, 本疾患に特徴的といえる所見は乏しく, その早期診断は困難であった. しかしながら, GPTに比してGOTの著明な上昇が特徴的な傾向と考えられた. 循環不全に起因する腸管虚血の病態は, 保存的治療にもかかわらず腸管壊死の進展に伴いDIC, MOFへと進み, 全例死亡した. 積極的な診断, 外科的治療が考慮されなければならない. |