Abstract : |
超低体温麻酔下心臓移植実験モデルを用いて, Prostaglandin I2(PGI2)の移植心並びにレシピエントに対する効果について検討した. 研究対象として体重5kg前後の雑種幼犬を用い, レシピエント犬をエーテル麻酔下に表面冷却にて直腸温18℃まで冷却した後, 循環遮断を行ってレシピエント心を摘出し, ドナー心を同所性に移植した. 移植後復温過程において, 心拍出量, 左室収縮期圧, LVmax dp/dt, 肺動脈圧, 心拍数を測定し, 更に心筋水分量及び組織学的検索を行って, PGI2の効果を検討した. 対象24組をPGI2投与の有無, ドナー心の保存の有無にて4群に分けた. PGI2が投与された群では, ドナーの心停止液中に500ng/mlで混入投与され, 更にこの摘出心を移植されたレシピエント犬は, 冷却, 復温過程でPGI2を1μg/kg/minの速度で持続注入された. 保存心が用いられた群は, 4℃のEuro-Collins液にて4時間単純浸漬保存された心臓が移植された. PGI2が投与された群は, 心拍再開直後の心拍出量, 左室収縮期圧, LVmax dp/dtが良好であった. 更に, 復温過程の全経過を通じて心拍出量は, PGI2の投与により良好に維持され, 4時間の保存心が移植された場合に特にPGI2の効果が著明となった. 復温時間は, PGI2の投与により短縮され, 心筋水分量は4時間保存心では増加していたが, PGI2の投与によりこの増加は抑制された. 病理学的所見でも, 4時間保存による変性がPGI2の投与により軽微となった. 超低体温麻酔下心臓移植において, PGI2は特に保存心を用いた場合その効果が期待されると考えられた. |