Abstract : |
糸球体濾過値(GFR)の低下以前に早期の糸球体障害を検出するとされる尿中マイクロアルブミン(U-Alb)を体外循環(ECC)前後で測定し, ECCにおけるU-Alb測定の意義と有用性を検討した. 対象は成人開心術25例でU-Albと従来の糸球体機能指標として血中及び尿中Cr, BUN, 血清β2-microglobulin, 尿量及び心拍出量を測定した. 更に, U-Albの指数として分時尿量を乗じたAlbumin Excretion Rate(AER)及び尿中Crで除したアルブミン指数(AlbI)をGFRとしてクレアチニンクリアランス(Ccr)を求めた. それらから各指標の推移, 体外循環指標との関係及び術後急性腎不全に進行する可能性のある糸球体障害遷延例の検討を行った. その結果, AER, AlbIはECC開始と共に上昇し術後も高値を持続, 術後24時間から4日のCcrが回復した時期でも有意に高かった. 以後は低下し, AERは術後7日に, AlbIは術後14日に有意差が消失した. 従って, AER, AlbIはCcrでは示されない糸球体障害を示し, 特にAlbIの変化からECCによる糸球体障害はECC開始より術後7日以上存在し, 14日後には回復する一過性の機能的障害と考えられた. 体外循環指標との関係ではECC中のAlbIとECC及び大動脈遮断時間が正の相関を示し, 長時間体外循環が影響することが示唆された. また, 開心術後の糸球体障害遷延は無拍動流体外循環及び術前の糸球体機能低下が影響し, その術前診断にAlbI測定が有用であり, 術前AlbI高値(>51mg/g・Cr)例は潜在的糸球体機能低下例と考えられ体外循環及び術後管理において考慮が必要である. |