Abstract : |
症例は54歳, 男. 発熱, 左下肢痛及び呼吸困難を訴えて来院. 血液培養でブドウ球菌が検出され, 血管造影では左浅大腿動脈の閉塞があり, 断層心エコーでは大量の大動脈弁逆流を認めた. 緊急に大動脈弁置換術を行った. 無冠尖, 右冠尖に穿孔を認め, 弁縁には疣贅が付着していた. 併せて膝上で左下肢切断術を行った. 術後心不全症状は改善したが, 低血圧が持続し術後第6病日には腹部に血管雑音を聴取するようになった. 腹部大動脈造影で左総腸骨動脈起始部の瘤状の拡張と左総腸骨動静脈瘻を認めたため開腹手術を行った. 腹部大動脈は分岐部が瘤状に拡張し, 大動脈分岐部から約1cm末梢の左総腸骨動脈の内側に内膜欠損を認め, その部分から左総腸骨静脈に穿孔していた. 静脈の亀裂は結節縫合で閉鎖し, 動脈は人工血管で置換した. 抗生剤は術後6週間投与した. その後の経過は良好である. 腹部大血管に発生する動静脈瘻はまれな病態であり, その多くは動脈硬化性腹部大動脈瘤の下大静脈への破裂によって起こる. 最近われわれは, 感染性心内膜炎に続発した細菌性左総腸骨動静脈瘻に対して手術を行い良好な結果を得たので報告する. |